関空から北京を経由して、やっとドイツはフランクフルトへ到着。
6月1日夕方に日本を出発し、20時間以上空の上にいたにも関わらず、空港の時計の針は6月2日午前7時を指していた。
ああそっか、時差があるのかとしみじみ感じていると、イミグレーションの前にはあっと言う間に大勢の人だかりが出来ていた。
列に並んで待つ間に帰りの航空券を買っていないことを思い出した。
そういえば関空のチェックインカウンターで受けた勧告を忘れていたのだ。
ドイツ行きの航空券をチェックインして受け取り、見送りに来てくれた夫とベンチに座っていると、さきほど応対してくれた女性のスタッフが駆け寄ってた。
帰りの航空券はあるかと聞かれ、まだ買ってないと答えると彼女は少し困った顔をした。
なんでもドイツまで行けたとしても帰りの航空券がないと、入国出来るかどうかわからないし、その保証は出来ないと言う。
私はもちろん保証してもらうつもりなどない旨を告げ、そのときは事なきを得たが、そのことがすっかり頭から抜けていたのだ。
後から知ったことだが、わざわざダミーの航空券を買っておいて、入国後すぐにキャンセルするというような入念な人もいるらしい。そのくらい帰りの航空券は重要ということなのだ。
順番待ちの列はどんどん短くなっていく。さて、どうしよう。なんと言おうか。そもそもドイツにどのくらいいるのかも決めてないのだ。
考えあぐねいていると、ついに私の番が来た。
ええい、どうにでもなれと男性スタッフの前に足を進めた。
ドイツにはどのくらいいるのかー多分1週間くらい。
帰りの航空券はあるかーない。ヨーロッパを2か月くらい旅する予定なんだ。
彼は少し怪訝そうに私を見ていたが、背中の大きなバックパックの存在に気づくと、いっていいと意外にもあっさり通してくれた。
少し拍子抜けしたものの、問題なく入国できたことにほっと胸をなでおろした。
恐らく彼は何百いや何千というバックパッカーを見てきたのだろう。
そして私の姿と先達を重ねてくれたのではないだろうか。
自己満足ではあるが、なんだかバックパッカーとしてのお墨付きをもらえたようで、私は堂々とした足取りで空港を後にした。