翌朝は、ハルシュタットよりさらに山奥の町へと向かった。
いくつかのケーブルーカーを乗り継いで山頂へ上ると、5フィンガーという展望台がある。
ケーブルカーを降りると誰もがこぞって展望台を目指すのだが、展望台まで行かなくとも周りを見渡せばいつでも絶景を拝むことが出来た。
空との距離が近くなり、雲が同じ目線にある。
下を向くと、高山でしか生息しない草花が広がっている。
まるで天国のような光景だった。
隣を歩いていたカップルが歩道を少しはずれて腰を下ろすと、持参してきたリンゴやパンを広げて、絶景の前でピクニックを始めた。
私はそんな2人を心の中で羨ましいなと思ってしまった。
この壮大な絶景の感動を分かち合う人がいないことに、猛烈な寂しさを感じてしまったのだ。
旅を始めてすでに18日が経っていた。
旅立つ前は平気だと思っていた一人旅も、少し心もとなくなってきた。
1人でいるときは孤独を感じないが、集団の中に1人でいると孤独を感じる。
これは日常生活でも旅の中でも不変の真理であるとひとりごちた。