今日はいよいよお祭りの日だ。
お祭り自体は3日間行われるのだが、少しでも節約するために初日だけ参加することにした。
お祭りの期間中は、宿の値段が跳ね上がるのだ。
滞在中のホステルは空きがないということだったので、町から少し離れたペンションに泊まることにした。
この旅初めての個室である。
1泊10,000円とかなり値が張ったが、背に腹は代えられない。
セルフチェックインを終え、いよいよ祭りへと繰り出した。
町では、ルネサンス時代の衣装に身をつつんだ地元民が思い思いの時間を過ごしていた。
男性は騎士の恰好をし、女性は長いスカートを履いた町娘の恰好だ。
衣装のクオリティがとても高く、城下町の建物も相まってまるでルネサンス時代にタイムスリップしたような雰囲気を感じることが出来た。
そして最も感銘を受けたのが、彼らが携帯しているカップである。
ただのカップではない。
当時のものを模して、角をくりぬいて取ってを付けたようなカップである。
彼らはそれを常に携帯し、マートで買ったドリンクや露店で買ったビールなどを、わざわざそのカップに移しかえて持ち歩くのである。
そのくらい細部まで、彼らは徹底した仮装をしていた。
町では至る所でイベントが開催されている。
大きな広場では、数十人が輪になってフォークダンスのようなものを踊っていた。
それはまさしく私がプラハの公園で見たフォークダンスであった。
お城にも初めて行った。
門の前のお堀には真っ黒な熊が3頭いて、気だるそうに堀の中をうろうろしていた。
日本ではお堀は川に鯉が定番だったので、私はかなり驚いてしまった。
お城からの展望は、プラハ城と同様素晴らしいものだった。
オレンジ色の屋根屋根。ここではそれに加えて山の緑色が鮮やかであった。
夜にはルネサンス風ロックバンドの野外コンサートが開催された。
ラストコールが終わると、町中の建物からぽつりぽつりと灯りが消え始める。
いよいよフィナーレのたいまつのパレードが始まった。
仮装した住民がたいまつを持って町を行進している。
楽器隊も交じって演奏し、音楽に乗って楽しそうに闊歩している。
その姿はとても愉快であり、なおかつ神秘的であった。
祭りの後はいつもさみしい。
静まり返った町を背に私は宿へと戻った。
3日間の滞在とお祭りと個室の部屋は私の心を芯から癒してくれた。
そして恐らく最初で最後であろう個室で思う存分く寛ぎ、明日に備えて就寝した。