翌日は同部屋の日本人女性とプラハ城へと向かった。
彼女は私と同様チェックインしたばかりで、たまたまベットが隣同士であった。
最初はお互い英語で話していたが、彼女の英語のアクセントに聞き馴染みあったので、日本人ですかと聞くと、まさしくその通りであったのだ。
今はイギリスで働いているらしく、チェコでの物価の安さに驚いていた。
翌日同じ場所に行くというので、話の流れから一緒に行くことになった
2人でトラムの駅を探していると、さっそく面食らってしまう出来事があった。
彼女が携帯で時刻表を調べ出したのである。
私がオフラインの携帯しか持っていないということもあるが、個人的には電車の時刻表を調べるのがあまり好きではない。
数時間に1本の列車でもなければ、わざわざ時刻表に合わせて行動したくないのである。
彼女はもう少しで目的地までのトラムが到着すると言い、小走りになった。
私も合わせて走ってはみたが、その時点で多少嫌気が差していた。
1本乗り遅れてもまた次のに乗ればいい。
間違ったものに乗ったら乗ったで、予想外の素晴らしい光景に出会えるかもしれないのに。
私はその言葉をぐっと飲み込み、時刻表を調べてくれた彼女に礼を言ってトラムに乗り込んだ。
プラハ城へ着くと、お城の中を見ると言う彼女に別れを告げ、宿でまた会おうということになった。
お城の入館料を節約したかったというのもあるが、一刻も早くひとりで気の向くままに行動したかったのである。
しばらく城壁内を散策していると、大きな建物の前に人だかりが出来ている。
見物人に聞いてみると、どうやら守衛によるパレードらしきものが始まるらしい。
数分後、遠くのほうからラッパの音が聞こえ始めた。
音楽隊がマーチングをしながら広場に整列する。
すると、今まで守衛をしていた男性が聴衆に踵を返し、音楽隊に合流する。
さらに音楽隊の中から1人が進み出て、門の前に立ち守衛となった。
たったそれだけのことであった。
けれども聴衆は拍大きな拍手をし、門番の彼もまんざらでもなさそうに胸を張ってその拍手を受け入れた。
拍子抜けした私は、入場料のかかる塔や博物館をスキップして、そそくさとお城を後にした。
プラハの町は噂で聞く通り、美しい町であった。
特に建物の屋根が全てオレンジ色で統一されており、お城から見下ろす眺望は素晴らしかった。
しかし私にはどこか物足りない感じがした。
町が完成され過ぎてる。
博物館にも行ってみたが、外観も内観も完膚なきまでに美しいのである。
どこにも隙がないので、何だか温かみがないような気がしてしまう。
夕暮れのライトアップされた町を見ると、私はすぐに宿へと帰った。
宿のまわりは住宅街ばかりだ。
人によっては雑多で美しくないと感じるかもしれないが、私は何故だがホットした。
私は人の温もりを感じれるふつうの街並みのほうが好きなのだなとつくづく実感した。