空港を出るとすぐに地下鉄に乗り、フランクフルト中央駅へと向かった。
この旅で唯一日本から予約していたのが、ユーレイルパスとマンハイムという町の宿である。
ユーレイルパスとは、EU圏内であれば特定の期間に特定の日数だけ電車が乗り放題になるというチケットだ。
いくつかプランはあるが、私は2か月間のうち15日間有効なパスを購入した。
理由は3つある。
まず1つ目は、少なくとも2か月後には日本に帰らなくてはならないこと。
2つ目は、長距離を移動する日程が少なくとも10日以上ある(予定)であること。
3つ目は値段である。私が選んだプランは、57,000円。
決して安くはないが、15日間乗り放題ということで元を取れるのではないかと踏んだのである。
しかし、元を取るという意気込みが、後に旅の足枷となってしまうということは、このとき思いもしていなかったのだが。
マンハイムは、人口約30万人の大学都市で宮殿のような校舎のマンハイム大学が有名である。
私が最初の目的地にマンハイムを選んだのは、フランクフルトから電車で30分程度と距離が近かったという理由だけであり、どのような街であるかほとんど未知数であった。
フランクフルト中央駅に着くと、マンハイム行きの列車を電光掲示板の中から探して行く。
ドイツ語で「駅」は「Bahnhof」。
日本でいうJRにあたるドイツ鉄道は「Deutsche Bahn」略して「DB」。
しかし、どこを探しても見つからない。
掲示板の前で途方に暮れていると、一人の女性らしき人が声をかけてくれた。
女性らしきと言ったのは、その人が坊主頭であったからである。
声や服装からして女性であると思われるのだが、少したじろいでしまった。
マンハイムに行きたいのだけど、電車が見つからないと伝えると、彼女は優しい声でマンハイム行きは電車が1時間以上遅れていることを教えてくれた。
ドイツでは日常茶飯事であるらしい。
彼女はDBの列車検索アプリを使って代わりの列車の時間と何番ホームかを教えてくれた。
後から知ったことだが、DBの列車検索アプリはヨーロッパで広く普及していて、ドイツだけでなく他の主要国の電車の運行情報を調べたり、特急の席を予約したりできるのである。
私はSIMを利用していなかったので、アプリをダウンロードすることは出来なかったが、ひとまず記憶に留めておくことにした。
私は彼女に礼を言い、見た目からくる印象で一瞬ひるんでしまったたことを心の中で謝罪した。
気を取りなおして、ホームのDBオフィスでユーレイルパスを有効化してもらい、いざマンハイムへと向かう列車に乗り込んだ。