鈍行列車 ヨーロッパ編

欧州2ヵ月一人旅

ポーランド クラクフ④ 日曜市と花粉症

今日は朝から鼻の調子が悪い。

花粉症がますますひどくなっている。

私は鼻をすすりながら、今日は町をぶらぶら散歩することにした。

 

日曜日はどこかしらの路上でフリーマーケットをやっている。

私は地元の人に交じり、骨董品や古着を見て回った。

特に興味を引いたのは、古い切手やポストカードを売っている店だった。

店と言っても、折りたたみテーブルに切手や何とも分からない骨董品などを並べているだけなのだが、どうやら掘り出し物の匂いがプンプンする。

しばらく眺めていると、店主の老人が話しかけてきた。

彼は古い切手やポストカード、昔の通貨を収集しているらしい。

店頭に並んでいるだけでもかなりの量があるので相当な収集癖だ。

なかでも目を引いたのは、ヒトラーの横顔に鍵十字のスタンプが押されたポストカードだ。

1939年から終戦までのわずか6年間使用されたものだ。

15ゾルチと値は張ったが、ポストカードに秘められたナチスの罪深さやポーランド人たちのやるせ無さを思うと、不思議と高いとは感じなかった。

 

その後は教会やユダヤ人街、名作「シンドラーのリスト」で有名なストリートや工場跡地の博物館を見て回った。

ユダヤ人街のなかにあるシナゴークは、入場料をケチって行かなかった。

 

町をぶらついていると、だんだんと目がかゆくなり、ついには充血して真っ赤になってしまった。

一旦宿に戻り、どうしようかと考えていると、初日に喋ったトラックドライバーに会った。

よほど私が弱っているように見えたのだろう。

調子が悪いのかと聞かれ、恐らく花粉症だと思うと答えると、目薬を貸してあげようかと言う。

私が丁寧に断ると、遠慮していると思ったのか、同部屋の誰かが薬を持っているかもしれない、今から聞いてくるから待ってろと言う。

私はいくら親切心からでも他人からもらった薬は飲めないと思い、本当に大丈夫だと伝えると、彼は「お前は本当に日本人だな」と首をすくめた。

私は少し馬鹿にされたような気になり、むきになって「そうだ。これが日本人の美徳だ。」と言ってのけた。

そして私は自分で名言してしまった日本人の美徳とやらを守るために、ふらふらの足取りでなんとか近くのファーマーシーに駆け込み、花粉症の薬を手にしたのであった。

 

夜はドラゴン伝説で有名らしい、川沿いのドラゴン像を見に行った。

一定の時間間隔で口から火を噴くらしく、大勢の人が集まっては散ってを繰り返していた。

近くのベンチに座ってその様子を見ていると、突然後ろから大きな音がした。

川のほうに振り返ると、大きな花火が打ちあがっていた。

私はクラクフでの滞在に満足し、そろそろ次の国へ行こうかと重たい腰を上げて帰路へと着いた。

クラクフの夜空